<石森宏氏(NPO法人ゼファー池袋まちづくり/アイポイント理事長)>
「ゼファー池袋まちづくり」は、池袋西口商店街連合会を母体として生まれたNPO。
池袋西口を活性化するためのさまざまな活動に取り組んできた。
地域通貨「アイポイント」は、
放置自転車対策、繁華街の環境浄化パトロール、街の緑化と美化、都市と農園との共生という
4つのプロジェクトを連動させた活動。
緑化については、立教大学社会学部阿部治ゼミと協力し、
大学のシンボルであるツタを池袋の街じゅうに広げる取り組みを行っている。
こうした活動に参加した人、寄付をした人がもらえる「アイポイント」は、
プロジェクトの一環としてメンバーらが埼玉の農園で育てたジャガイモと交換している。
今年、池袋駅西口駅前広場にお目見えした
緑の立体造形「モザイカルチャー」の維持管理も、ゼファーの活動のひとつ。
モザイカルチャーとは、金属のフレームでつくった人や動物などの形に土を入れ、
花や草を植え込んだもので、今回設置したのは「えんちゃん」という名のフクロウのキャラクター。
銅像や石像は作ったらそれで終わりになりがちだが、植物は日々のメンテナンスを必要とする。
維持するのは大変だが、その作業を通じて人のつながりが生まれ、コミュニティづくりへと発展する。
立教大学の学生たちも巻き込みながら手入れをし、緑のまちづくりをすすめている。
緑は人の心をおおらかにし、みんなを幸せにする。
緑を広げるために体を動かし、汗を流すことは、ある意味、一番の省エネ。
こうした活動には、高齢者の積極的な参加を期待したい。
リタイアした人たちが本気になって取り組めば、街は必ず変わる。
自分にとって、緑のまちづくりはライフワーク。
もちろん、緑のカーテンも実践している。
効率重視の社会にピリオドを打ち、自然のサイクルを大切にしながら、
池袋を「田舎化」したいと夢見ている。
<中村陽一氏(立教大学21世紀社会デザイン研究科委員長・教授)>
池袋は、街の中心部と住宅地が近接しているコンパクトなターミナル都市。
歩行者の動線は駅周辺に集中し、面的な広がりに欠ける点が課題。
めぐり歩くことでの楽しさを演出することは、街の魅力を高める重要な条件のひとつだが、
一方では住民のプライバシーの確保も求められる。
こうした回遊性とプライバシーの両立を実現するうえで、緑のカーテンは大きな役割を果たしうる。
コミュニティにおいても、住まいの開放性とプライバシーの確保を両立させることは重要なカギとなる。
仮設住宅に緑のカーテンを設置する活動は、まさにそのニーズに応えている。
その一方で、仮設住宅では集会所が活用されていないケースが目につく。
阪神淡路大震災で、仮設住宅での孤独死が相次いだ経験から、
コミュニティづくりには集会所が必要だという話になって、今回設置が進んだが、
器だけつくってもコミュニティは育たないし、コミュニティづくりを目的化した活動は往々にして失敗する。
コミュニティとは、暮らしに必要な機能を当事者が協力して生みだす中から、結果として育っていくものだ。
緑のカーテンには、人々のつながりを生みだす「場」としての力がある。
そうした場が地域に点在し、つながっていくことが重要。
たとえば、池袋西口公園の周囲にオープンカフェが次々とできて緑のカーテンをしつらえ、
公園の緑とつながれば、魅力的なゾーンになると思う。
緑のカーテンは、室内の温熱環境の改善や地域の緑化に役立つだけでなく、
環境意識の向上、コミュニティの育成など、さまざまな波及効果がある点が魅力。
さらに、文化やアート、デザインとの融合や、コミュニティビジネス、ソーシャルビジネスなどと
接点をもつ取り組みなども考えうる。
こうしたソーシャル・インパクトを数値化するのは難しいが、
緑被率とは異なる観点から、「豊島方式」「池袋スタイル」といった形で、
豊島区の緑に関する独自の指標を考えてみるのもおもしろいかもしれない。
Facebookにアップされた 渡辺由美子さん の報告を許可を得て、転記させていただきました。