雨のみちをデザインする 株式会社タニタハウジングウェア

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タニタハウジングウェア
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ディテール Detail

第11章 きる

11-1 RC造独立壁 11-2 開口部水切1 11-3 開口部水切2 11-4 壁面

外壁に伝わる雨の処理の手法です。外壁を伝わる雨は外壁自体に付着した埃や開口部や笠木などの突起物の埃を拾い雨垂れとなり、外壁を汚すとともに劣化の原因となります。そのため開口部周りや大きな壁面、外壁天端はうまく水を切り外壁を保護する必要があります。この章では、外壁に伝わる雨水を効果的に切るディテールについて述べます。

11-1:RC造独立壁
・楠葉の家(山本堀アーキテクツ)/1991年
11-2:開口部1 両端に立ち上がりのある水切り
・小学館(石)(日建設計)/2016年
・ヒューリック青山第2ビル(アルミ)(青木純)/2008年
・某ビル(アルミ+樹脂)
11-3:開口部2 水切り端部の雨を受ける小さな樋
・某住宅(アルミ)
11-4:壁面
・フィッシャー邸(ルイス・カーン)/1967年
・シャピロ邸(ルイス・カーン)/1962年

第10章 そわす

10-1 大架構 10-2 フレーム

駅舎や体育館など大スパンや大規模な公共的施設では、構造自体をあらわし、デザインの主役として美しい空間をつくりだしています。架構があらわしのため雨といの処理がデザインの良し悪しを左右します。主に大架構で構造が外部にあらわしとなる空間の建築に見られる手法です。
もう一つは、柱の中心に沿わせるなど構造と一体となったフレームの一部を構成する手法です。太い構造を分節し、圧迫感を軽減する効果もあります。
この章では、構造体に寄り添うように樋を設け目立せない雨のみちについて述べます。

10-1:大架構
・高知駅(内藤 廣)/2008年
・グランルーフ(ヘルムート・ヤーン)+(東京駅八重洲開発設計共同企業体:日建設計・JR東日本建築設計事務所)/2013年
・広電宮島口駅(乾久美子)/2022年
10-2:フレーム
・東京国立博物館東洋館裏(谷口吉郎)/1968年
・香川県庁舎(丹下健三)/1958年

第9章 とけこむ

9-1 横とい 9-2 竪とい・横とい 9-3 埋め込みとい 9-4 壁面緑化

樋が“あらわし”で外部にありながらまったく樋に見えずファサードに溶け込む手法です。この章では、フレームに見える横とい、フレームや全体の構成要素の一部を構成する竪とい、外壁に埋め込み意匠として表現された竪とい、そして番外編ですが樋ではなく、壁面緑化が雨のみちとなり外観をつくるディテールについて述べます。

9-1:横とい
・葛西臨海水族園(谷口吉生)/1986年
9-2:竪とい・横とい
・シュレーダー邸(ヘリオット・トーマス・リートフェルト)/1924年
・コーマン邸(ルイス・カーン)/1971年〜1973年
9-3:埋め込みとい
・香川県庁舎(丹下健三) / 1958年  
・埼玉西濃運輸本社営業所(清水建設一級建築士事務所)/1995年
9-4:壁面緑化
・むくどり第2保育園(袴田喜夫建築設計室)/2017年

第8章 にせる

8-1 8-2 フレーム 8-3 格子

”にせる”は、「かくす」で述べたように、公共的な施設ではたてといを隠蔽し外部に出さないディテールが一般的です。しかし、隠蔽した途端雨漏りの原因をつくるようなものです。雨といの基本はやはり“あらわし”です。“あらわし”の雨といを美しく見せる手法です。この章では樋自体を柱、オブジェ等建築のファサードの一部として樋として感じさせずに美しく見せるディテールについて述べます。

8-1柱
・大阪城レストハウス 遠藤秀平 /2006年
・下館市立図書館(筑西市立中央図書館)三上清一/1998年
・谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館 谷口建築設計研究所/2019年
8-2フレーム
・コスモ・ザ・パークス調布多摩川(山本堀アーキテクツ・三輪設計)/2003年
8-3格子
・メゾン・カレ邸  格子―2本の竪樋+3本の木 アルヴァ・アアルト/1959年

第7章 かくす

7-1 柱・スクリーン 7-2 躯体雨とい

”かくす”は、雨といを見せない手法です。公共的な施設ではたてといを隠蔽し外部に出さないディテールが一般的です。しかし、隠蔽した途端雨漏りの原因をつくるようなものです。雨といの基本はやはり“あらわし”です。しかし、“あらわし”とした途端、雨といはファサードの重要な一要素となり、美しいファサードをデザインするのはとても大変です。この章では、大きく2つの手法について取り上げます。一つはたてといを外壁側に設け柱やスクリーン等で隠しスッキリしたファサードを創る手法です。もう一つは躯体自体に雨といを打ち込む手法です。この場合構造の一部となるので十分な構造検討が必要です。

7-1:柱・スクリーン
・東北大学青葉山東キャンパスセンタースクエア中央棟(ガラススクリーンカバー)
 山本堀アーキテクツ/2011年
・ヌーヴェル赤羽台11号棟(柱状GRCマリオン)遠藤剛生/2015年
・シティハウス仙川ステーションコート(フレームに隠蔽された樋)安藤忠雄/2013年
・シティコート上馬 (壁・PS)山本堀アーキテクツ+みのべ建築設計事務所/2002年
7-2:躯体雨とい
・学校法人清風南海学園 キャンパス整備事業 日建設計/2013年
・長沢浄水場 山田守/ 1957年
・瞑想の森市営斎場  伊東豊雄 /2006年
・ジョンソンワックス本社ビル フランク・ロイド・ライト/ 1936年

第6章 はずす

6-1 呼び樋 6-2 内勾配

“はずす”は、深い庇やバルコニーを持つ建築の雨を導く手法です。ここでは大きく2つの手法について取り上げます。一つは雨の処理の基本と言える先端の軒といや側溝から呼び樋により壁面まで導きたてといに接続する雨の処理で、呼び樋をシンプルにスッキリ見せる手法です。もう一つは深い庇を持つフラットルーフの雨の処理です。軒先から内勾配で雨を壁面のたてといや隠蔽樋に導き、樋を前面に出さないことで深い庇の水平性を強調する手法です。

6-1:呼び樋
住田町役場(前田建設工業・長谷川建設。中居敬一郎都市設計異業種特定建設共同企業体+近代建築研究所)、ザ・リッツ・カールトン京都(日建設計)、高森のいえ(蓑原敬 環境設計研究所)、みんなの交流館 ならはCANvas(都市建築設計集団/UAPP)、守谷の家(伊礼智)、小さな森の家 i-works 15坪(伊礼智)、最小限住宅(増沢洵)
6-2:内勾配
国立博物館 東洋館(谷口吉郎)、東京工業大学70周年記念講堂(谷口吉郎)

第5章 うかす

5-1 軒先 5-2 バルコニー 5-3 壁面

深い軒やバルコニーの雨といの処理は、一般的に先端の横といや側溝から呼びといにより壁面まで導かれ、竪といに接続されます。そのジョイント部は軒やバルコニーの形状なりに曲げられることが多く、美しくありません。また、竪といは壁の突起物などがある場合も同様に、その突起物に沿って曲げられてしまい、美しくありません。しかし、ジョイント部を極力シンプルにし、軒先端付近からまっすぐ、あるいは竪といをかわし、宙を走るように竪といを設けることができれば、美しく見せることが可能です。この章では曲がりがなくシンプルかつ構成的で美しい竪といのディテールについて述べていきます。

5-1:軒先
待庵 (千利休)、桂離宮月波楼、小出邸 (堀口捨巳/1925)、ヒヤシンスハウス(立原道造/構想1937/竣工2005)、牧野富太郎記念館(内藤廣/1999)、愛知県立藝術大学講義棟(吉村順三/1966)
5-2:バルコニー
赤羽台団地 (山本堀アーキテクツ/2010)
5-3:壁面
海の博物館 (内藤廣/1992)

第4章 おどる

4-1 枡、鎖、ガーゴイルがつくるファサード 4-2 流れる雨がつくるファサード

基本、雨といはない方が、ファサードは美しくなります。今回取り上げる「おどる」のひとつは、あえて雨といをファサードの主役とし雨とい自体でファサードをつくる手法です。「おどる」のもうひとつは、昔の民家や寺社にあるような雨といをつけず直接流す手法です。滝のように流れる雨そのものが、ファサードをつくります。この章では、雨といと流れる雨がリズミカルなファサードをつくる手法について、見ていきます。

4-1:枡、鎖、ガーゴイルがつくるファサード
パレスサイドビル (日建設計 林昌二/1966年)、コープ共済プラザ (日建設計/2015年)、ディジョン ノートルダム教会正面壁 (1250年)
4-2:流れる雨がつくるファサード
牧野富太郎記念館 (内藤廣/1999年)、大阪府立狭山池博物館 (安藤忠雄/2001年)

第3章 うける

3-2 水盤

3章は「うける」。3章の後半では、前半に続き、屋根で受けた雨水を視覚化しつつ流れる雨を受けて地面に導く「うける」の事例について述べて行きます。前半は、柱頭にロート状の受け口を持つ縦といに屋根の雨を落とす形式の「うける」で、縦とい自体がユニークで美しい外観をつくりだす要素でした。後半では、むしろ雨の流れを十分に視覚化しダイナミックに受けて流す水盤が主役のディテールとなります。

3-2:水盤
牧野富太郎記念館 (内藤 廣/1999年)、愛知県立藝術大学講義棟 (吉村 順三/1966年)、千葉県ゐのはな記念講堂 (槇 文彦/1963年)、フィッシャー=ペイジ邸 (グレン・マーカット/1998年)、小笠原流家元会館 (清家 清/1962年)、京都国際会館 (大谷 幸夫/1966年)

第3章 うける

3-1 ロート状の受け樋

3章は「うける」。一般的には竪樋は、横樋や屋根面のドレンから連続して配管され、雨を地面まで導きます。「うける」は樋が途中で分節されたひとつの形式で、ふたつの手法があります。ひとつは横樋、谷樋、屋根面のドレンで導かれた雨水を、ロート状の受け口を持つ独立した竪樋で受け、雨を導く手法。もうひとつは竪樋を途中で切断し、宙に浮かせて水盤で受けながら地面に流す手法です。3章の前半では、樋自体が美しく水の流れもファサードの一部となる竪樋やロート状の受け樋を、次回の後半では、雨のみちを視覚化し受ける水盤のディテールについて述べていきます。

3-1:ロート状の受け樋
八代市立博物館 (伊東 豊雄/1991年)、別府電報電話局 (吉田 鉄郎/1928年)、下館市立図書館 (三上 清一/1998年)、安曇野市役所 (内藤 廣/2015年)、マグニー邸 (グレン・マーカット/1999年)、アルヴァ・アアルト自邸・スタジオ (アルヴァ・アアルト)、大鳥居神社

第2章 ながす

2-3 壁面-2

2章後半では、前半に続き、壁面を“ながす”事例について述べていきます。壁面それ自体を“雨のみち”にするデザイン手法には、前半に紹介した「開放型樋」が代表的ですが、国内外にはそれ以外にもアイデアあふれるさまざまな手法がみられます。

2-3壁面-2:
群馬音楽センター (アントニン・レーモンド)、リコラ・ヨーロッパ社工場・倉庫 (ヘルツォーク&ド・ムーロン)、キョロロ (手塚 貴春、手塚由比)、A (青木 淳)(屋根と壁面が一体化した建築)、サザンハイランドの住宅 (グレン・マーカット)、出雲大社庁の舎 (菊竹 清訓)

第2章 ながす

2-1 鎖等 2-2 壁面-1(開放型樋)

“みせる”手法が横樋のみで雨は開放したのに対し、竪樋以外のものに添わせて地面まで雨水を見せながら流す手法です。代表的なものは伝統的な日本の建築に見られる鎖です。横樋から直接鎖等をたらすことで、呼び樋がなく屋根をスッキリきれいにみせることが出来ます。その他壁にニッチを設けた開放型の樋、竪樋の一面をオープンにしたコの字型の開放型の樋、壁面それ自体を雨のみちにするデザインと様々な手法がみられます。この章では、鎖、壁面のデザインのディテールについて述べていきます。前半では、鎖等、壁面(開放型樋)を、後半は壁面について述べていきます。

2-1鎖等:
鈴木大拙館 谷口吉生(鎖)、三井八郎右衞門邸(ひも+石)、太田記念美術館(鉄輪)、
AKIHABARA KADAN atelierA5(鎖+植栽)

2-2壁面-1(開放型樋):
石の美術館 隈研吾、市村記念体育館 坂倉準三

第1章 みせる

1-2 ガーゴイル

第2回目は「1.みせる」のふたつ目、雨水が流れ落ちる先の吐水口をデザインした“ガーゴイル”を取り上げます。西洋建築の魔除けと雨樋(雨水の吐水口)の役目を持ち、怪物等の彫刻であり門や屋根の装飾として設けられていた“ガーゴイル”は、主としてゴシック建築に見られ、20世紀になってからは、ル・コルビジェのロンシャンの教会(1950 - 54)が発表され、建築の表現として再び脚光を浴びました。
(*詳しくはウェブマガジン「雨のみちデザイン」連載:大嶋信道の「雨のみち探偵団」vol.1~3をご覧下さい)
ゴシック建築の様に本来は彫刻的なものですが、シンプルな納まりも一つのデザインと考え、近現代建築のガーゴイルを見ていきます。

1-2ガーゴイル:メゾン・カレ邸(アルヴァ・アアルト)、上野寛永寺、インド建築大学、インド高等裁判所、サラバイ邸(ル・コルビュジェ)、リヴァ・サン・ヴィターレの住宅(マリオ・ボッタ)、箱根プリンス(村野藤吾)、ふじ幼稚園(手塚貴春、手塚由比)

第1章 みせる

1-1 横樋:軽快なファサードをつくる宙に延びる横樋

“みせる”は、雨を樋によって地面に導かない手法です。雨の流れ自体が視覚化され空間の意匠となる、まさに自然が創り出すオブジェと言えます。“みせる”は雨樋の基本である横樋・吐水口のみを使用し樋を “表し”雨を“直に流す”手法です。大きく分けて横樋のみをそのまま利用したシンプルかつ軽快なデザインと、雨水が流れ落ちる先の吐水口をデザインしたいわゆる“ガーゴイル”に分けることができます。この章では、2回に分けて、この2つのデザインのディテールについて述べて行きます。

1-1横樋:桂離宮、月波楼、グルカン・ハウス(ピーター・ズントー)

11章の目次

1章 みせる

雨を樋によって地面に導かない手法です。雨の流れ自体が視覚化され空間の意匠となる、まさに自然が創り出すオブジェと言えます。“みせる”は雨樋の基本である横樋・吐水口を“あらわし”“直に流す”手法です。大きく分けて横樋のみをそのまま利用したシンプルかつ軽快なデザインと、雨水が流れ落ちる先の吐水口をデザインしたいわゆる“ガーゴイル”に分けることができます。この章では、この2つのデザインのディテールについて述べて行きます。

1-1横樋:桂離宮、月波楼、グルカン・ハウス(ピーター・ズントー)

1-2ガーゴイル:メゾン・カレ邸(アルヴァ・アアルト)、上野寛永寺、インド建築大学、インド高等裁判所、サラバイ邸(ル・コルビュジェ)、リヴァ・サン・ヴィターレの住宅(マリオ・ボッタ)、箱根プリンス(村野藤吾)、ふじ幼稚園(手塚貴春、手塚由比)

2章 ながす

みせる”手法が横樋のみで雨は開放したのに対し、竪樋以外のものに添わせて地面まで雨水を見せながら流す手法です。代表的なものは伝統的な日本の建築に見られる鎖です。その他壁のニッチ状の開放型の樋、壁面それ自体を雨のみちにするデザインと様々な手法がみられます。この章では、鎖と壁面のディテールを中心に述べて行きます。

2-1鎖等:寺社、鈴木大拙館(谷口吉生)、三井八郎右衞門邸、太田記念美術館、AKIHABARA KADAN(atelierA5)

2-2壁面-1(開放型樋):石の美術館(隈研吾)、市村記念体育館(坂倉準三)

2-3壁面-2:群馬音楽センター(アントニン・レーモンド)、リコラ・ヨーロッパ社工場・倉庫(ヘルツォーク&ド・ムーロン)、屋根と壁面が一体化した建築(青木淳)、キョロロ(手塚貴春、手塚由比)、サザンハイランドの住宅(グレン・マーカット)、出雲大社庁の舎(菊竹清訓)

3章 うける

一般的には竪樋は横樋から地面まで連続し配管されます。竪樋を途中で切断し宙に浮かせ、流れる雨水をロート状の樋や水盤で受けながら地面に流す手法です。この章では樋自体が美しく水の流れもファサードの一部となる竪樋のディテールについて述べます。

3-1ロート状の受け樋:八代市立博物館(伊東豊雄)、別府電報電話局(吉田 鉄郎)、下館市立図書館(三上 清一)、安曇野市役所(内藤 廣)、マグニー邸(グレン・マーカット)、アルヴァ・アアルト自邸・スタジオ(アルヴァ・アアルト)、大鳥居神社

3-2水盤:牧野富太郎記念館 (内藤 廣)、愛知県立藝術大学講義棟 (吉村 順三)、千葉県ゐのはな記念講堂 (槇 文彦)、フィッシャー=ペイジ邸 (グレン・マーカット)、小笠原流家元会館 (清家 清)、京都国際会館 (大谷 幸夫)

4章 おどる

雨樋は基本ない方がファサードは美しくなります。あえて雨樋をファサードの主役とし雨樋自体でファサードを創る手法です。この章では雨樋がリズミカルなファサードを創る手法について述べます。

4-1枡:パレスサイドビル(林昌二)

4-2鎖:COOP社屋ビル(日建設計)

5章 うかす

深い軒やバルコニーの雨樋の処理は、一般的に先端の横樋や側溝から呼び樋により壁面まで導かれ、竪樋に接続されます。そのジョイント部は軒やバルコニーの形状なりに曲げられることが多く美しくありません。ジョイント部を極力シンプルにし先端付近に竪樋を宙を走るように設け美しく見せる手法です。この章では曲がりがなくシンプルかつ構成的で美しい竪樋のディテールについて述べます。

5-1軒先:牧野富太郎、海の博物館(内藤廣)、 小出邸(堀口捨巳)、 待庵(千利休)、桂離宮(月波楼)、バルコニー、赤羽台団地(YHA)

6章 はずす

“はずす”は、深い庇やバルコニーを持つ建築の雨を導く手法です。ここでは大きく2つの手法について取り上げます。一つは雨の処理の基本と言える先端の軒といや側溝から呼び樋により壁面まで導きたてといに接続する雨の処理で、呼び樋をシンプルにスッキリ見せる手法です。もう一つは深い庇を持つフラットルーフの雨の処理です。軒先から内勾配で雨を壁面のたてといや隠蔽樋に導き、樋を前面に出さないことで深い庇の水平性を強調する手法です。

6-1呼び樋:住田町役場(前田建設工業・長谷川建設。中居敬一郎都市設計異業種特定建設共同企業体+近代建築研究所)、ザ・リッツ・カールトン京都(日建設計)、高森のいえ(蓑原敬 環境設計研究所)、みんなの交流館 ならはCANvas(都市建築設計集団/UAPP)、守谷の家(伊礼智)、小さな森の家 i-works 15坪(伊礼智)、最小限住宅(増沢洵)

6-2内勾配:国立博物館 東洋館(谷口吉郎)、東京工業大学70周年記念講堂(谷口吉郎)

7章 かくす

雨樋を見せない手法です。公共的な施設では竪樋を隠蔽し外部に出さないディテールが一般的です。しかし、隠蔽した途端雨漏りの原因をつくるようなものです。雨樋の基本はやはり“あらわし”です。しかし、“あらわし”とした途端、雨樋はファサードの重要な一要素となり、美しいファサードをデザインするのはとても大変です。この章では、大きく2つの手法について取り上げます。一つはたてといを外壁側に設け柱やスクリーン等で隠しスッキリしたファサードを創る手法です。もう一つは躯体自体に雨といを打ち込む手法です。この場合、構造の一部となるので十分な構造検討が必要です。

7-1 柱・スクリーン:東北大学青葉山東キャンパスセンタースクエア中央棟(山本堀アーキテクツ)、ヌーベル赤羽台11号棟(遠藤剛生)、シティハウス仙川ステステーションコート(安藤忠雄)、シティコート上馬(山本堀アーキテクツ+みのべ建築設計事務所)

7-2 躯体雨とい:瞑想の森市営斎場(伊東豊雄)、学校法人清風南海学園 キャンパス整備事業(日建設計)、長沢浄水場(山田守)、ジョンソンワックス本社ビル(フランク・ロイド・ライト)

8章 にせる

“あらわし”の雨樋を美しく見せる手法です。雨樋は横樋と竪樋により地面まで雨水を導くのが一般的です。横樋と竪樋の接合部がファサードの美しさを決定すると言っても過言ではありません。この章では横樋を強調せず竪樋を柱、オブジェ等建築のファサードの一部として美しく見せるディテールについて述べます。

8-1柱:大阪城レストハウス(遠藤秀平)、下館市立図書館(筑西市立中央図書館)三上清一、谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館(谷口建築設計研究所)

8-2フレーム:コスモ・ザ・パークス調布多摩川(山本堀アーキテクツ・三輪設計)

8-3格子:メゾン・カレ邸 格子―2本の竪樋+3本の木(アルヴァ・アアルト)

9章 とけこむ

樋が“あらわし”で外部にありながらまったく樋に見えずファサードに溶け込む手法です。この章では、フレームに見える横とい、フレームや全体の構成要素の一部を構成する竪とい、外壁に埋め込み意匠として表現された竪とい、そして番外編ですが樋ではなく壁面緑化が雨のみちとなり外観をつくるディテールについて述べます。

9-1横とい:葛西臨海水族園(谷口吉生)

9-2竪とい・横とい:シュレーダー邸(ヘリオット・トーマス・リートフェルト)、コーマン邸(ルイス・カーン)

9-3埋め込みとい:香川県庁舎(丹下健三)、埼玉西濃運輸本社営業所(清水建設一級建築士事務所)

9-4壁面緑化:むくどり第2保育園(袴田喜夫建築設計室)

10章 そわす

駅舎や体育館など大スパンや大規模な公共的な施設では、構造自体をあらわしデザインの主役として美しい空間をつくりだしています。架構があらわしのため雨樋の処理がデザインの良し悪しを左右します。主に大架構で構造が外部にあらわしとなる空間の建築に見られる手法です。この章では構造体に沿うように樋を設け目立せないディテールについて述べます。

10-1大架構:高知駅(内藤廣)、ポンピドーセンター・メス(坂茂)

10-2フレーム:香川県庁舎(丹下健三)

11章 きる

外壁に伝わる雨の処理の手法です。外壁を伝わる雨は外壁自体に付着した埃や開口部や笠木などの突起物の埃を拾い雨垂れとなり、外壁を汚すとともに劣化の原因となります。そのため開口部周りや大きな壁面、外壁天端はうまく水を切り外壁を保護する必要があります。この章では、外壁に伝わる雨水を効果的に切るディテールについて述べます。

11-1RC造独立壁:楠葉の家(山本堀アーキテクツ)

11-2開口部1 両端に立ち上がりのある水切り:小学館(石)(日建設計)、ヒューリック青山第2ビル(アルミ)(青木純)、某ビル(アルミ+樹脂)

11-3開口部2 水切り端部の雨を受ける小さな樋:某住宅(アルミ)

11-4壁面:フィッシャー邸(ルイス・カーン)、シャピロ邸(ルイス・カーン)