雨のみちをデザインする 株式会社タニタハウジングウェア

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ディテール Detail

「雨のみち、そのデザインは、楽しい世界です」

これは、私が30年間建築の設計を行ってきてたどり着いた感覚です。
しかし、30年間の設計を振り返ってみると、雨の処理は後回しになっていたと感じています。平面計画、断面計画、立面計画、設備計画を平行してスタディを進め、全体像をつめていく中で雨の処理は平行して検討されていなかったと思います。日本の自然環境に対応した深い庇や水平の庇はとても美しく、模型等でも十分検討しますが、樋まではなかなか表現しません。ファサードを決定する上で意匠的にとても重要な要素でありながら、意識の外にあるのではないでしょうか。

それは、街の家並みにも現れています。ファサードの一要素である雨樋は、場当たり的に設置され醜い姿を現しているのがほとんどです。設計をする人、施工をする人がまったく配慮をせず、ただ機能すれば良いと考えているのが現状だからです。やはり設計者、施工者はファサードを決定づける重要な要素として雨の処理=「雨のみちデザイン」をしっかり考えるべきです。

雨は建物に影響を及ぼします。雨は建物に降り、ある時は外壁に直接吹きつけます。雨樋の基本機能は、その雨から外壁を保護し、雨を地面に戻す排水です。そのときに、雨に対し最大の注意を図らなければいけないのが雨漏りと雨垂れによる汚れです。この2大テーマを美しく、そして丈夫でメンテナンスしやすく解決するのが「雨のみちデザイン」です。

世界中の建築を観察してみると、「雨のみちデザイン」は大きく2つの視点があることがわかってきました。ひとつは、雨をスムーズに流す「流し方」のデザインです。「流し方」のデザインには、直接雨を流す方法と一度受けて雨を流す方法があります。もうひとつは、美しく見せる「納まり」のデザインです。「納まり」のデザインは、樋を表す方法と隠す方法があります。この2つ方法を次の11のキーワードに分類、『雨のみちデザイン「流し」「納める」ディテール11章』として事例と筆者のこうあったらいいなという手法を、文章とスケッチを交えながら解説していきます。

堀 啓二
ほり けいじ
1957年福岡県生まれ
1980年東京藝術大学美術学部建築科卒業。1982年同大学大学院修士課程修了
1987年同大学建築科助手
1989年山本・堀アーキテクツ設立(共同主宰)
2004年共立女子大学家政学部生活美術学科建築専攻助教授。
現在、共立女子大学家政学部建築・デザイン学科教授、山本・堀アーキテクツ共同主宰、一級建築士

主な作品に、大東文化大学板橋キャンパス(共同設計、日本建築学会作品選奨、東京建築賞東京都知事賞)、プラウドジェム神南(グッドデザイン賞)、二期倶楽部東館(栃木県建築マロニエ賞)、工学院大学八王子キャンパス15号館(日本建築学会作品選奨)、福岡大学A棟(共同設計、日本建築学会作品選奨)ほか。

  • 「雨のみちデザイン 流し・納めるディテール11章」
  • 著者:堀啓二
  • 発行者:(株)タニタハウジングウェア
  • 企画・監修:真壁智治(M.T.VISIONS)
  • 編集委員:真壁智治(M.T.VISIONS)、大西正紀(mosaki)
  • デザイン・編集:mosaki
  • 協力:共立女子大学大学院建築・デザイン専攻:関笑加、太田花奈